鳥を記す

はじめまして。さいたま市とその周辺で、野鳥を中心とした自然観察を楽しんでいます。おもに鳥についてのブログになると思いますが、鳥の写真はありません。風景と植物だけです。

飛島探鳥旅行<2>

海を渡る小鳥1羽

 定期船「とびしま」は217トン。粟島舳倉島の連絡船より少し大きい。船に乗り込むと早速アナウンスがあった。外海に出ると波が1.5mあり、揺れが予想されるので気をつけてほしい、とのこと。1.5mの波は、これまでの私の基準では「波はほとんどない」である。船に弱い知人のA氏がニコニコしていられる波である。何故、わざわざアナウンスで注意するのだろう? 

 酒田港を出ると、たしかに揺れる。粟島でいちばん揺れたときと同じぐらいか? あの時の波は2mかそれ以上で、出航するか否かギリギリまで決まらなかった。そのときより波も低く、船も大きいのに、しかも揺れに強い双胴船なのに、何故? 

 後日、調べたところ、飛島は対馬海流の中にあるので、その影響で揺れるらしい(Wikipediaによる)。1.5mの波といっても、場所によって違うのだ。さらに、この前日はもっと波が高く、船内で転倒して怪我をする人が続出したらしい。それ故のアナウンスだったのだ。 

 その時はそんなことは知らず、アナウンスに従って、おとなしく座席で鳥を見ていた。オオミズナギドリがパラパラ飛ぶだけ。なんか物足りない。やはり外から見なくては。双眼鏡を持って甲板に上がる。雨は止んでいたが風が強く、寒い。不機嫌そうな海面を見回すが、やはり少数のオオミズナギドリ、時々ウミネコ、それだけ。そこへ、誰かの「小鳥!」の声。船の上を一羽の小鳥が飛んでいる。ツグミかと思ったが、どうも違う。波状飛行。風の中で難儀している。写真を撮った人に見せてもらったら、アトリであった。

 このように時々、たった1羽で海を渡っている小鳥を見る。そのたびに、不安な気持ちに駆られる。広大な海にあって、あまりにも小さくあまりにも弱々しい。無事に目的地へ着けるのだろうか。心配なんてものではない、心が痛む。

 「鳥は自由でいいな、鳥になりたいな」などと言うのは、鳥を知らない人である。鳥は、ちっとも自由ではない。生き残るための過酷な戦いから逃れられない。海を渡る小鳥なんか見てしまうと、ますます鳥にはなりたくない。どうしても鳥にならなければならないなら、ハシブトガラスがいい。渡る必要がなくて、図太くて逞しくて、いつも仲間で群れていて…

 そんなことを考えているうちに、寒さが浸みてきたので、船室に降りた。最後まで甲板で粘っていた仲間が「あの後、アトリが群れで飛んでいったよ」という。それを聞いて、少しほっとした。旅の仲間がいれば…(続く)

 

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帰りの航路から見た飛島 ほとんど平坦な感じに見えるが…