鳥を記す

はじめまして。さいたま市とその周辺で、野鳥を中心とした自然観察を楽しんでいます。おもに鳥についてのブログになると思いますが、鳥の写真はありません。風景と植物だけです。

冬の使者

 「今年も冬の使者ハクチョウが○○湖に姿を現しました」なんていうニュースが放送される季節になった。冬の使者は場所によって違う。九州ではマナヅルやナベヅルなのだろう。都市部の、ちょっと緑の多い住宅街に住んでいる人にとって、冬の使者はジョウビタキあたりだろうか。私の場合も、神奈川県内の私鉄の駅から徒歩5分のマンションに住んでいた頃は、ジョウビタキが冬を知らせてくれていた。数年前、さいたま市の郊外に引っ越したら、冬の使者がミヤマガラスになった。

  ミヤマガラスなんて、昔は関東地方にはいなかった。鹿児島県の出水へツルを見に行った時に初めて、ライフリストに入る鳥の一つだった。それが、いつ頃からか、渡良瀬遊水地周辺の板倉町などの農耕地に飛来するようになった。そんなに昔のことではないと思う。埼玉県内への進出は、もう少し後だろうか。ここでまた、「日本野鳥の会埼玉」公式ホームページの「30年間の探鳥会記録」を調べてみる。探鳥会での記録があるのは2004年以降となっている。

 

 2010年12月半ば、新居から車で十数分、さいたま市見沼区の東に広がる農耕地でミヤマガラスを見た。1,2羽ではない。昔、出水で見たような大群である。当時の記録には250羽+となっている。群れには5羽ほどのコクマルガラスも混ざっていた。遠出して初めて見る鳥だと思っていたが、身近な鳥になっていた。なんとなく嬉しかった。

 しかし、この時はまだ、この鳥が冬の使者だとは思っていなかった。2011年10月18日。同じ場所へ行った。なぜ行ったのか、目的は覚えていない。チョウゲンボウとかハイタカ属がよく出る場所なので、その辺が狙いだったのだろう。そこに、いたのである。50羽ほどのハシボソガラスの群れにミヤマガラス成鳥4羽。こんなに早く飛来するとは思ってもみなかった。11月12日、同じ場所で200羽越えのミヤマガラス。中にコクマルガラス暗色型3羽。その後、春まで200羽前後の群れが、この農耕地で過ごした。

 次の年からはもう、ミヤマガラスの到来が待ち遠しくてたまらず、10月中旬になると越冬地通いを始めるようになった。2012年の初認は10月26日。2013年は10月17日。2014年は10月21日。マイフィールドでは毎年、ジョウビタキよりも早い。堂々と「冬の使者」の座を獲得した。

 彼等の飛来パターンは、まず数羽程度の先遣隊がやってくる。次に百羽以上の大きな群れが来るが、定着しないこともある。それから越冬隊の本隊が来る。彼等は昼間の時間帯をこの農耕地で過ごし、夕方には数km離れた神社の杜のねぐらへ移動する。このねぐらは、冬の間はハシブトガラスハシボソガラスミヤマガラスに少数のコクマルガラスと4種のカラスで賑わうことになる。

 ところで今年は、ジョウビタキの初認は10月20日午前。ミヤマガラスの初認は同じ日の午後。数時間の差で、「冬の使者」の座をジョウビタキに奪われてしまった。