鳥を記す

はじめまして。さいたま市とその周辺で、野鳥を中心とした自然観察を楽しんでいます。おもに鳥についてのブログになると思いますが、鳥の写真はありません。風景と植物だけです。

謎解きの季節

 サシバの渡りというと、伊良湖岬や白樺峠の壮大な光景を思い浮かべる人が多い。そういう渡りの名所は言わば “空の高速道路”の、ほんの一部である。東北や関東北部の繁殖地から越冬地である東南アジアへつながる壮大な “空の高速道路”は、サシバにしか見えない。しかし知りたい、どうしても知りたいと、渡りルートの謎解きにハマってしまう人々がいる。彼らの努力により、関東地方の渡りルートが少しずつ解明されてきたが、まだまだ、分からないことの方が多い。

 

 埼玉県については、サシバ達は江戸川や利根川を越えて入ってきて、天覧山飯能市)や中間平(寄居町)など西部の山地を通って出てゆく。これぐらいしか分かっていなかったが、数年前、けっこう多くのサシバが県東部、蓮田市の農耕地を渡っていることが明らかになった。蓮田の南西に天覧山がある。これでルートがつながったね!と喜ぶのはまだ早い。ここに埼玉県内のサシバの渡り最大の謎がある、と私は思っている。

 

 8月下旬から9月の初め、サシバ蓮田市周辺に姿をあらわし始める。9月10日前後には渡りのピークを迎え、その後は数が減る。年によって違いはあるが、近年はこのパターンが多い。一方、西の天覧山では、渡りのピークは大体お彼岸前後である。蓮田のピークと、10日から2週間ほどのズレがある。蓮田を通るサシバ天覧山ルートを通らないのではないか?という説もある。それなら、どこを通っているのか? 蓮田から先の目撃情報がほとんどない。見えないほどの高さで都心部を渡っている、という説もあるが、こうなったらお手上げである。

 以下は、根拠に乏しいが私の仮説。まだ暑さの残る早い時期に蓮田の空を飛んだサシバ達は、もしかしたら一気に“高速道路”に乗っていないのではないか? 太平洋高気圧が、まだまだ元気。越冬地へ向かうのに都合のいい風が吹かない。そんな時季である。サシバ達は埼玉県東部から中央部のあちこちにある“サシバの道の駅”で、休息と栄養をとりながら、のんびり、ジワジワと移動しているのではないだろうか? そして季節が進み、越冬地へ向けていい風が吹くようになったら、天覧山ICから高速へ…??

 サシバ渡りルートの謎解きは難しい。しかし彼らのためには、しなければならない。なぜならば“サシバの道の駅”とは、県内各地に残された緑地であり、彼らの好む食べ物がたくさん住む農耕地だからである。私達には、そういう場所を守ってゆく義務があると思う。