鳥を記す

はじめまして。さいたま市とその周辺で、野鳥を中心とした自然観察を楽しんでいます。おもに鳥についてのブログになると思いますが、鳥の写真はありません。風景と植物だけです。

ゴミステーション攻防戦

  早朝に、双眼鏡をぶらさげて近所を散歩する。1時間ほど歩きまわると、けっこう、いろいろな鳥に出会えて楽しい。ところで、この日出会ったのは、ゴミを散らかしている1羽のハシブトガラスであった。

 

 その集積場では、ゴミ袋の山にネットがかぶせてあったが、重しを乗せていない。これでは何の効果もない。野菜くずやコンビニ弁当の容器が散乱する中、奴はのんびりと洗剤の箱をつついていた。ご近所のことだし、これ以上散らかされないよう、追い払う。近づいていくと、敵は数メートル先のフェンスに避難した。散乱したゴミはそれほど多くない。先を急ぐわけではないので、落ちていたレジ袋にゴミを回収した。手で触る気がしないゴミは、ネットの奥に蹴り入れた。そんなことをしていたら、通りがかりの老婦人が「カラスが見張ってるわよ」と言って、うふふと笑う。奴は、避難先のフェンスの上から、こちらをじっと睨みつけていたのだ…カラスに馬鹿にされている気がした。このゴミ集積場を死守せねば!という気になってきた。

 角を曲がったところで身を低くする。しばらく敵の様子を見張ろうと思った。しかし、どうも落ち着かない。人目が気になる。早朝の住宅地で、双眼鏡を持って潜んでいる…これは<不審者>以外の何者でもない。冗談じゃない。ゴミを散らかすカラスごときのために、不審者扱いされてなるものか! 

 作戦変更。カラスを攻撃する。バードウォッチャーが鳥を見る時にしてはいけないことを、このカラスにするのである。ドタドタと鳥に走り寄って大きな音や声を出す。この行動が、鳥の追払いに絶大な効果を持つことは何度も経験して(させられて)いる。これしかない。カラスに向かってダッシュ。さらに手をたたいて大きな音をたてる作戦。しかし2,3歩走ったところで、奴はあっさりと飛び立ってしまった。去り際に「あー」と間が抜けた声で鳴いた。すると、みっちりと繁った近くのエノキから、もう一羽が現れ、声の主を追っていった。「あー」に答えるかのようであった。

 

 彼らが飛び去った方角を探したが、姿がない。ゴミをあきらめて移動したようだ。周辺をぶらぶら歩きまわって数分後、現場に戻ってみた。ゴミは散らかされていなかった。ゴミ集積場は守られた。私はカラスに勝ったのだ! …しかし大して嬉しくもなかった。我ながら「バッカじゃないの?」という思いが残っただけであった。